RFM分析入門|Excelでできる「大切にすべきお客様」の見つけ方

    「常連さんは何人いますか?」「離れかけているお客様は?」——こう聞かれて数字で答えられる会社は少なくありません。顧客リストはあるのに、全員に同じ案内を送って反応がない、という声もよくお聞きします。そこで役立つのが、購入の最近さ(R)・頻度(F)・金額(M)の3つの軸でお客様を分けるRFM分析です。Excelだけで始められます。本記事では手順だけでなく、実際にやると必ずつまずく箇所まで含めてご紹介します。

    目次

    RFM分析とは——3つの軸でお客様の「今」を見る

    R(Recency:最近さ)
    最後に買ってくれたのはいつか。日用品・飲食・小売のように購入が繰り返される商材では、最近購入したお客様ほど次も来てくれやすい傾向があるとされ、Rを重視した運用がよく行われます。一方、住宅・自動車・設備のように購入サイクルが数年単位の商材では、直近購入者がすぐ再購入するとは限りません。
    F(Frequency:頻度)
    一定期間に何回買ってくれたか。同じ商材の中で比べれば、回数が多いお客様ほど継続的にご利用いただけている目安になります。
    M(Monetary:金額)
    一定期間にいくら使ってくれたか。売上への貢献度を表します。

    ポイントは、この3軸が「合計いくら買ったか」だけでは見えない情報を教えてくれることです。累計金額が大きくても最終購入が1年前なら「離反しかけの元・お得意様」、金額は小さくても先週2回来ていれば「これから育つ新しい常連候補」——。同じ「累計100万円のお客様」でも、打つべき手はまったく違います。
    なお、同じ「重点を絞る」考え方を商品側に使うのがABC分析です。顧客はRFM、商品はABCと覚えると使い分けがはっきりします。

    RFM分析:3つの軸でお客様を採点する R 最近さ(Recency) 最後に買ったのはいつか 購入サイクルが短い商材で 重視される軸 F 頻度(Frequency) 期間内に何回買ったか 継続してご利用いただけて いるかの目安 M 金額(Monetary) 期間内にいくら使ったか グループ内の優先順位に 使う軸 R×Fの2軸で4グループに分け、Mで各グループ内の優先順位をつける 必要なデータは「顧客名・購入日・購入金額」の3列だけ
    図:RFM分析の3つの軸。RとFでグループを分け、Mで各グループ内の優先順位を決めます。

    ExcelでのRFM分析、5つの手順

    手順1:購入履歴を「顧客名・購入日・購入金額」の3列にする

    必要なデータはこの3項目だけです。レジや販売管理ソフトからCSV(表計算ソフトで開ける一覧形式のデータ)を出せるならそれで十分。出せない場合は、請求書の控えか売上台帳から直近1年分を手で写します。顧客リストそのものの整え方はリピート率を上げる顧客データ活用で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。

    なお、購入履歴は個人情報にあたります。分析結果をダイレクトメールやメール配信に使う場合は、あらかじめ公表・通知している利用目的の範囲内かをご確認ください。判断に迷う場合は弁護士等の専門家にご相談ください。

    手順2:同じお客様が複数行に分かれていないか確認する

    ここが実際に一番つまずくところです。「(株)山田製作所」「山田製作所」「ヤマダ製作所」——同じ取引先が表記の違いで3行に分かれていると、購入回数は3分の1に、金額もバラバラに集計されてしまいます。この表記のゆれをそろえる作業(名寄せ)を先に済ませてください。

    やり方は単純で、顧客名の列を五十音順に並べ替えて上から眺め、似た名前が隣同士に来たところを目で拾うだけです。取引先が100件なら15分ほどの作業です。完璧を目指さず、上位50社だけそろえれば実用上は十分です。ここを飛ばすと、後の分析結果を見た営業担当から「この数字は違う」と言われて、それきり終わります。

    手順3:顧客ごとにR・F・Mを集計する

    顧客ごとに「最終購入日(R)」「購入回数(F)」「合計金額(M)」を出します。使うのはピボットテーブル——Excelの「挿入」タブにある、一覧表を自動で集計してくれる機能です。細かい操作を覚える必要はなく、行に顧客名、値に「購入日の最大」「購入日の個数」「金額の合計」を指定するだけです。関数がお好みなら、顧客名の一覧の隣に MAXIFS(最終購入日)・COUNTIFS(回数)・SUMIFS(金額) の3本を並べても同じ結果になります。ピボットテーブルの基本はExcelだけでできる売上データ分析でも触れています。

    手順4:各軸を3段階で採点する

    最初から細かくせず、各軸3段階(3=良い、1=要注意)で十分です。区切りは業種の購買サイクルでまったく変わります。飲食・小売なら「1ヶ月以内=3/3ヶ月以内=2/それ以前=1」、BtoBの部品・消耗品なら「3ヶ月以内=3/半年以内=2/それ以前=1」、住宅設備や機械のように数年に一度の買い物なら「1年以内=3/3年以内=2/それ以前=1」——おおよそ「通常の発注間隔の1〜1.5倍」を最上位の区切りにすると、実感と合いやすくなります。FとMは、金額・回数の上位3分の1から順に3・2・1を振れば十分です。

    一方で正直にお伝えすると、RFM分析が向かない商売もあります。受注生産で1社あたり数年に一度の大型案件しかない場合、代理店経由で最終顧客が見えない場合、取引先が20社以下で全部社長の頭に入っている場合——このいずれかなら、RFMに時間をかけるより取引先ごとの担当者メモを整えたほうが早いです。

    手順5:R×Fでグループに分け、打ち手を変える

    採点できたら、まずR(最近さ)とF(頻度)の2軸で4つに分けます。Mは各グループの中の優先順位づけに使います。この分け方にすると、どのお客様も必ずどこか1つに入り、二重に数えることもありません。

    ①優良客(R高・F高)
    売上の土台。先行案内・優先枠・担当者からのひと声など、特別扱いを惜しまない層です。中でもMが大きい方から手厚く。
    ②常連候補(R高・F低)
    最近来てくれた新しいお客様。初回から2回目への引き上げが最重要で、次回のご案内やお礼の連絡が効きます。
    ③離反しかけ(R低・F高)
    かつての常連。「お久しぶりです」のひと声と再訪のきっかけを、離れきる前に。Mが大きい方から優先的に。RFMを使わないと見落としやすい層で、ここを見つけられることが最大の収穫です。
    ④休眠(R低・F低)
    コストをかけすぎない層。ただしMが大きい(過去に多額の取引がある)お客様は、休眠でも③と同じ扱いにするのが実務的です。

    つまずくのはここです——3つの現実的な壁

    手順どおりに進めても、たいてい次の3つが起きます。先に知っておくだけで越えやすくなります。

    ①営業担当が反発する
    「自分の客を会社が勝手にランク付けするな」——これはよく起きます。対策は、ランクを社内評価ではなく「連絡の優先順位」として説明すること。「この5社に先に連絡してほしい」という依頼の形にすれば、受け取り方が変わります。
    ②優良客への特別扱いが他のお客様に漏れる
    限定特典は、値引きではなく先行案内・優先枠・情報提供といった「知られても不公平に見えにくいもの」から始めるのが安全です。
    ③2回目の集計が来ない
    これが一番多い失敗です。防ぐ方法は一つだけ、初回の集計が終わったその日に、次回の作業日をカレンダーに入れてしまうこと。「四半期に一度やろう」という決意は、ほぼ確実に消えます。

    もうひとつ。休眠客への案内をやめると、一時的に売上が数%落ちることがあります。同じ手間を①〜③に振り向けた効果が出るまで2〜3四半期は見るつもりでいてください。1回で判断すると、必ず「分析のせい」になります。四半期に一度、同じ基準で採点し直せば、「優良客が減っていないか」「離反しかけからの復帰が何人いたか」という変化も見えてきます。

    よくある質問

    Q. 顧客データがきちんと残っていません。それでもできますか?
    A. できます。紙の納品書控えや請求書の控えしかない会社は、まず「R(最近さ)」だけの1軸で、上位30社に絞ってやってみてください。控えを取引先ごとに分け、直近の日付を見て「3ヶ月以内・半年以内・それ以前」の3つの山に分けるだけ。1〜2時間で終わり、これだけで「離れかけているお得意様」が数社浮かびます。FとMは次回からで十分です。3軸そろえないと始められないと考えるのが、RFMで一番よくある挫折の理由です。
    Q. 3段階ではなく5段階で採点すべきですか?
    A. 最初は3段階をおすすめします。5段階にすると組み合わせが125通りになり、分類が細かくなりすぎて打ち手が追いつきません。5段階に増やすのは、顧客数が数千件を超えて「3段階では同じグループが大きすぎる」と感じてからで十分です。
    Q. どのくらいの期間の購入データが必要ですか?
    A. 目安は通常の購入間隔の3倍以上です。月に一度買う商材なら3ヶ月分でも傾向は出ますが、季節による波を含めて見たいなら1年分あると安心です。購入間隔が年単位の商材では3年分が必要になります。データが足りない場合は、期間を区切って「この1年に一度でも取引があったお客様」だけを対象にするのが現実的です。

    まとめ:全員に同じ働きかけをやめることから

    RFM分析は、①購入履歴を3列にする → ②名寄せをそろえる → ③R・F・Mを集計する → ④3段階で採点する → ⑤R×Fでグループに分け、打ち手を変えるの5手順で始められます。「全員に同じ案内」をやめてグループに合った働きかけに変えると、同じ手間でも反応が改善するケースが多く見られます。

    まずは今週、直近1年の請求書か売上台帳から「顧客名・購入日・金額」の3列だけを1枚のシートに写すところから始めてみてください。ここまで来れば、採点は30分ほどの作業です。

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    執筆・監修:WakaLabo株式会社 最終更新日:

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