データ分析の極意(8)MECE分解は足し算のイメージ

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データ分析におけるMECE分解の力

データ分析の世界では、複雑な問題を明確にわかりやすく、効果的に解決するためのキーとなるのが、問題の構造を正しく把握することです。この認識を助ける重要なアプローチが「MECE分解」。MECE、ちなみに「Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive」は、簡単にお伝えすると「漏れなく、ダブりなく」ということです。ルネ・デカルトの「分解と統合の哲学」がデータ分析で重要な点は過去の記事で書きましたが、その分解の方法で最も扱いやすいのが「MECE分解」になります。

問題があった場合、これを小さな部分に分解し、それぞれを個別に解析することで、より総合的な理解に到達することが可能になることがあります。MECE分解は、このプロセスを「足し算」としてイメージしますが、部分が全体の解決へどのように貢献するか明確にし、全体像を構築するための助けとなります。

例えば、売上合計があった場合、これを商品ごとに集計し分解したものを、すべて足すと売上合計に戻るように「足し算」でもとに戻るのが「MECE分解」と考えられます。市場分析を行う場合なども、MECEを用いて、顧客セグメント、競争環境、市場のトレンドなど、様々な要素に分けて考えることができます。このように、「MECE分解」は、複雑な問題をより扱いやすい小さな問題に分割し、それぞれを独立して分析することも可能です。

しかし、「MECE分解」の真価は、問題の部分がどのようになっていて、これをどのようにしたら全体の解決策につながるのかを考える上でも重要です。ものの要素を詳細に分析し、それらが全体の中でどのように機能しているのかを見極めることが必要になり、このプロセス、データ分析はより戦略的かつ効果的なものになっていきます。

MECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive)を用いる理由

MECEはかなり有名かつ知られた手法です。これを使用することで、複雑な問題を効果的に分析し、解決するための明確な枠組みを提供し、より質の高い意思決定を行うことができるようになることから、経営コンサルティング会社マッキンゼー&カンパニー社によって広く普及しました。この概念自体の起源を特定するのは難しいですが、マッキンゼー&カンパニー社がビジネス問題解決の方法としてこの原則を体系化し、広めたことは広く認識されています。

  1. 明確な問題の構造化: 複雑な問題を明確に理解しやすい小さな部分に分割することで、問題の全体像をよりよく把握できます。
  2. 重複と漏れの排除: MECEの原則に従うことで、分析の際に重複する要素や見落としがある要素を排除でき、より効率的かつ全面的な分析が可能になります。
  3. 戦略的意思決定の支援: さまざまな要素を独立して評価し、その後それらを組み合わせて全体を理解することで、より緻密な戦略を立てることができます。
  4. コミュニケーションの改善: 問題をMECEに従って構造化することで、他の人とのコミュニケーションがより明確かつ効果的になり、誤解を減らすことができます。
  5. 効率的な問題解決: 分割された問題は、それぞれ独立して取り組むことができ、より迅速かつ効果的な問題解決につながります。
  6. データ分析の精度向上: データ分析にMECEを適用することで、データの解釈がより正確になり、有意義な洞察が得られるようになります。

MECE原則が普及した背景

  1. マネジメントコンサルティングの台頭: MECEの普及は、マネジメントコンサルティング業界、特にマッキンゼー&カンパニーの影響力の拡大と密接に関連しています。マッキンゼーは、問題解決手法としてMECEを体系化し、それをクライアントの課題解決に適用することで、その有効性を広めたといわれています。
  2. ビジネススクールの教育カリキュラム: マネジメントコンサルティング業界とのつながりが深いビジネススクールでは、MECEが重要な教育ツールとして取り入れられました。MBAプログラムなどでのケーススタディや戦略論の講義を通じて、この原則が学生や将来のビジネスリーダーに広く伝えられています。
  3. 複雑化するビジネス環境: 20世紀後半から21世紀にかけて、ビジネス環境の複雑化が進み、企業はより緻密な戦略立案と問題解決手法を必要とするようになりました。MECEは、複雑な問題を明確に分析し、体系的に解決するためのフレームワークとして、多くの企業に受け入れられました。
  4. 情報技術の進展とデータ分析: 情報技術の進展とともに、データ分析の重要性が高まり、MECE原則がデータを整理し、分析する上で効果的な方法として認識されるようになりました。
  5. グローバル化と戦略的思考の必要性: グローバル化の進展に伴い、国際的なビジネス展開を成功させるためには、体系的かつ戦略的な思考が求められるようになりました。MECEは、グローバルなビジネス環境における複雑な課題を整理し、解決するための有効なツールとして位置づけられました。

これらの要因により、MECEはマネジメントコンサルティングの業界から始まり、ビジネススクール、企業経営、データ分析など多岐にわたる分野で広く普及し、現在では多くのビジネスプロフェッショナルにとって必須の思考ツールの一つとなっています。

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