税理士から決算書を受け取っても、「売上は分かるが、他はどこを見ればいいのか分からない」という経営者は少なくありません。決算書は隅々まで読む必要はありません。まずは3つの数字だけ押さえれば、自社の状態と打ち手の方向性が見えてきます。本記事では、その3つの数字と読み方を図解で解説します。
決算書を「全部読もう」としなくていい
決算書(損益計算書・貸借対照表)には多くの項目が並びますが、経営判断に日常的に使う数字は限られています。細かい勘定科目の分析は税理士や専門家に任せ、経営者はまず「儲かる体質か」「本業で稼げているか」「資金は持つか」の3点を毎月・毎期確認することが重要です。この3点に対応するのが、粗利率・営業利益・現預金残高です。
① 粗利率——儲かる体質かどうか
粗利率(売上総利益率)は「売上高に対して、仕入や外注費を引いた後にどれだけ利益が残るか」を示します。会社の「儲かる体質」を最も端的に表す数字です。
絶対値よりも「自社の過去との比較」と「同業種の水準との比較」が重要です。粗利率が下がってきている場合、値引きの常態化、原材料・外注費の上昇、利益率の低い商品への売上シフトなどが疑われます。
粗利率が低いまま売上を増やしても、忙しいのに利益が残らない状態が続きます。打ち手は「値付けの見直し」と「原価・外注費の点検」が基本線です。
② 営業利益——本業で稼げているか
営業利益は、粗利から人件費・家賃・広告費などの販管費を引いた「本業の儲け」です。粗利が十分でも営業利益が薄い場合、販管費が売上規模に対して重すぎることを意味します。
販管費を「人件費」「家賃等の固定費」「広告費等の変動費」に分解し、それぞれが売上の何%かを把握します。毎期同じ分け方で見ると、どこが膨らんでいるかが一目で分かります。
販管費の圧縮では、Excel集計や資料作成など「時間を食っている間接業務」の効率化も有効な打ち手になります。
③ 現預金残高——資金は持つか
利益が出ていても、現金が尽きれば会社は続きません。貸借対照表の現預金残高が月商(月あたり売上)の何ヶ月分あるかを確認してください。一般に、最低1ヶ月分では心もとなく、2〜3ヶ月分以上が一つの安心ラインとされます(業種や借入状況によって変わります)。
「利益は出ているのに現金が減っている」場合は、売掛金の回収サイト、在庫の増加、借入返済のバランスに原因があることが多いです。月次の資金繰り表を作ると、数ヶ月先の資金の谷が事前に見えます。
3つの数字を「毎月」見る仕組みにする
決算書は年1回ですが、この3つの数字は月次試算表で毎月追うことで初めて経営に使えます。おすすめは、月次で3つの数字を1枚のグラフにして眺めることです。変化に早く気づければ、打ち手も早く打てます。
「自社の数字をどう分解すれば原因が見えるのか」「月次で追う仕組みをどう作るか」でお困りの場合は、決算書分析・データ分析の専門家に伴走してもらうのが近道です。
よくある質問
- Q. 会計や簿記の知識がなくても大丈夫ですか?
- A. 大丈夫です。本記事の3つの数字は、簿記の知識がなくても「割り算1回」で確認できます。細かい仕訳の理解より、毎月同じ数字を見続けることの方が重要です。
- Q. 粗利率はどのくらいあれば良いのでしょうか?
- A. 業種によって水準が大きく異なるため、一律の正解はありません。まず自社の過去3期分の推移を見て、下がっていれば原因を分解するのが実践的です。
- Q. 税理士がいるのに、別途分析は必要ですか?
- A. 税理士の主業務は税務・記帳の正確性です。「数字から打ち手を考える」経営目線の分析は別のスキルであり、役割分担と考えると整理しやすいです。
まとめ
決算書は全部読む必要はありません。粗利率(儲かる体質か)・営業利益(本業で稼げているか)・現預金残高(資金は持つか)の3つを毎月見る仕組みを作れば、打ち手の方向性は自然と見えてきます。
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