「品揃えは増える一方なのに、どれが本当に稼いでいるのか分からない」——商品や取引先が増えてきた中小企業から、よくお聞きする悩みです。発注も販促も「なんとなく全部均等に」では、手間もお金も分散してしまいます。そこで役立つのが、売上データを重要度順にA・B・Cの3ランクに分けるABC分析です。特別なツールは不要、Excelだけで今日から始められます。
ABC分析とは——「全部大事」をやめるための道具
ABC分析は、商品(または取引先・サービス)を売上などの貢献度順に並べ、上位から累積で全体の約70%を占めるグループをA、70〜90%をB、残りをCとランク分けする手法です。多くの会社では「売上の大半を、ごく一部の商品が稼いでいる」という偏りがあり、ABC分析はその偏りを目に見える形にしてくれます。
ランク分けの狙いは、扱いにメリハリをつけることです。Aランクは欠品させない・接客や販促を厚くする、Bランクは効率よく維持する、Cランクは縮小・整理を検討する——。「全部大事」と言っている限り実現できない、力の配分ができるようになります。
ExcelでのABC分析、4つの手順
手順1:商品別の売上一覧を作る
直近1年(季節性が強い業種は1年分を推奨)の売上データを、商品名と売上金額の2列で一覧にします。レジや販売管理ソフトからCSVで出力できれば、それで十分です。
手順2:売上の大きい順に並べ替える
売上金額の降順で並べ替えます。この時点ですでに、「上位の顔ぶれ」と「下位に沈む商品」が見えてくるはずです。
手順3:累積構成比を計算する
売上合計に対する各商品の構成比を出し、上から順に足し上げた「累積構成比」の列を作ります。Excelなら数式を1本作ってコピーするだけです。
手順4:70%・90%で線を引き、A・B・Cを割り当てる
累積構成比が70%までをA、90%までをB、それ以降をCとします。この境界は絶対的なルールではなく、自社の実感に合わせて75%・95%などに調整して構いません。大切なのは、ランクごとに扱いを変えるという発想のほうです。
ランク分けした後の「打ち手」がABC分析の本番
分類して眺めて終わり、では意味がありません。ランクごとの定番の打ち手はこうです。
Aランク(主力):欠品は機会損失に直結します。在庫を厚めに持つ、仕入先との関係を強化する、目立つ売場・ページに置く——守りと攻めの両面で最優先します。
Bランク(中堅):手をかけすぎず、効率よく維持します。この中に「販促次第でAに化ける候補」が眠っていることも多く、伸びしろ探しの対象です。
Cランク(下位):即廃番ではなく、まず「なぜ置いているか」を問い直します。Aランク商品の付属品、特定の常連客のための商品など、売上以外の役割があるものは残す判断もあります。役割が説明できないものが、整理の候補です。
気をつけたい3つの落とし穴
①売上だけで判断しない——売上は大きいが値引きで利益がほとんど出ていない商品もあります。可能なら粗利額でも同じ分析を行い、両方の顔を見比べてください。②新商品を早々に切らない——発売直後の商品は実力が数字に出ていません。分析対象から外すか、別枠で扱います。③一度やって終わりにしない——ランクは季節や流行で入れ替わります。四半期〜半年に一度の定期実行が理想です。
よくある質問
Q. 商品数が少なくても意味がありますか?
A. あります。商品が20〜30点でも偏りは必ず存在します。また商品ではなく「取引先別」「メニュー別」「サービス別」に応用すれば、業種を問わず使えます。
Q. AランクとCランク、どちらから手をつけるべきですか?
A. まずAランクの欠品対策からです。効果が最も大きく、すぐ数字に表れます。Cランクの整理は影響関係の確認が必要なため、じっくり進めるのが安全です。
Q. 粗利のデータがありません。売上だけでもよいですか?
A. まず売上だけで始めて問題ありません。並行して、主要商品だけでも原価を整理していくと、次回から粗利ベースの分析ができるようになります。
まとめ:メリハリは「分類」から生まれる
ABC分析は、売上一覧を作る→並べ替える→累積構成比を出す→70%・90%で区切るだけの、最も手軽で効果の大きい商品分析です。ポイントは、分類のあとにランクごとの打ち手(Aは欠品させない、Bは効率維持、Cは役割を問い直す)まで踏み込むこと。まずは直近1年の売上データを2列の表にするところから始めてみてください。
WakaLaboでは、手元の売上データを使った商品分析・取引先分析の実践支援を行っています。「データはあるが活かし方が分からない」という段階からご相談いただけます。
