「欠品でお客様を逃した」——その反省から仕入を増やすと、今度は売れ残りの在庫が資金を圧迫する。多くの中小企業が、この行ったり来たりで悩んでいます。欠品も過剰在庫も、実はどちらもコストです。本記事では、勘や経験だけに頼らず、手元の在庫・仕入データを使って「適正在庫」を見つける考え方と、まず見るべき3つの数字、Excelから始める手順を図解で解説します。
欠品と過剰在庫は「両方コスト」という視点
在庫の悩みは、片方だけを見ると必ずもう片方に振れます。まずは両者が同じ「コスト」だと捉えることが出発点です。
売る機会を逃す「機会損失」、急ぎ発注の割高な仕入、納期遅れによる信用低下。売上に直結するため見えやすいコストです。
仕入代金として寝てしまう資金、保管スペースと管理の手間、時間とともに進む値下がり・劣化・廃棄。じわじわ効く見えにくいコストです。
目指すのは「在庫ゼロ」でも「たっぷり確保」でもなく、両方のコストが最小になるちょうどよい水準=適正在庫です。そしてこの水準は、データを見れば商品ごとに近づけていけます。
適正在庫を考えるための「3つの数字」
難しい理論は不要です。まずは次の3つの数字を、主要な商品について押さえます。
①平均出荷数:1日にどれだけ売れるか
過去数か月の出荷・販売データから、1日あたりの平均を出します。季節で大きく動く商品は、シーズンごとに分けて見るのがコツです。
②補充リードタイム:頼んでから届くまでの日数
発注してから入荷するまでの日数です。仕入先ごとに違うため、実績を記録しておきます。ここが長い商品ほど、早めの発注か多めの安全在庫が必要になります。
③安全在庫:変動に備える予備
需要は毎日一定ではありません。急な注文や仕入の遅れに備える予備が安全在庫です。多すぎれば過剰在庫、少なすぎれば欠品になるため、実績を見ながら調整します。
まずはExcelで「動く在庫・眠る在庫」を分ける
いきなり専用システムを入れる必要はありません。手元の販売・在庫データをExcelに集めるだけでも、打ち手は見えてきます。
「一定期間の出荷数 ÷ 平均在庫数」で、在庫がどれだけ入れ替わったかが分かります。回転率が極端に低い商品は、資金を寝かせている過剰在庫の候補です。
売上や出荷数の多い順に並べ、上位・中位・下位に分けます。上位は欠品させない、下位は思い切って絞る——と商品ごとにメリハリをつけるのが効果的です。
「この数量を下回ったら発注」という基準(発注点)を主要商品に決めておくと、担当者の勘に頼らず、欠品も過剰も減らせます。
よくある質問
- Q. 専用の在庫管理システムがないと始められませんか?
- A. いいえ。まずは販売・在庫データをExcelに集め、回転率と発注点を整理するところから十分始められます。効果を確認してからシステム化を検討すれば無駄がありません。
- Q. 安全在庫はどれくらい持てばよいですか?
- A. 商品によって異なります。需要のブレが大きい・欠品の影響が大きい商品ほど厚めに、安定して動く商品は薄めに、が基本です。実績を見ながら少しずつ調整します。
- Q. AIによる需要予測はうちにも必要ですか?
- A. まずは平均出荷数と発注点の運用で十分な効果が出ることが多いです。データが整い、より精度を上げたい段階になってから需要予測の導入を検討するのが現実的です。
まとめ:勘の発注から「数字で決める発注」へ
欠品も過剰在庫も、どちらもコストです。平均出荷数・補充リードタイム・安全在庫の3つで適正在庫の目安を持ち、在庫回転率で眠る在庫を見つけ、主要商品に発注点を決める——この流れなら、専用システムがなくてもExcelから始められます。勘に頼った発注から、データで決める発注へ切り替えることで、欠品と資金の両方の不安を同時に減らせます。
WakaLaboでは、在庫・仕入・販売データの整理から、回転率や発注点の見える化、その先の需要予測・自動化までを、中小企業の実情に合わせて伴走支援しています。
